読了本

新装版 隠し剣秋風抄 (文春文庫)
『隠し剣秋風抄』藤沢周平(文春文庫、1984)。
『孤影抄』の続編。といっても収録されている9つの短篇と前作とに直接の繋がりはない。「酒乱剣石割り」は呑んだくれのダメ兄と薄幸の妹の行く末が哀しく、「女難剣雷切り」は惚れっぽい惣六と女中のおさとが愛らしい。「孤立剣残月」はラストに驚かされた。彼女の存在すっかり失念してたからなあ。「盲目剣谺返し」は波津彬子が漫画化したら似合いそうな、切なくてやがて愛しき佳品だった。美男の盲目剣士と貞淑な妻のよりそう姿が目に浮かぶ。こればかりはホント、シニカルなオチにならずに済んでほっとした。加世の蕨たたき、食べてみたい……。それにしてもいつのまにやら藤沢周平はちょっとしたブームになっているようで。「蝉しぐれ」も映画化されるそうだ。