読了本

新編 物いう小箱 (講談社文芸文庫)
『新編 物いう小箱』森銑三講談社文芸文庫、2005)。
不思議な印象の短い話がたくさん收められている。いずれも再話風小品で、「一」では日本の、「二」では中国の怪異譚が語られる。とても楽しくて、もうちょっと、もうちょっとと読み進めているうちに最後まで行ってしまった。軽くて上品な高級焼き菓子みたいな本だ。日本のものでは「物見」「仕舞扇」「朝顔」「老賊譚」「彦右衛門と狸」、中国のものでは「衝立の女」「不思議な絵筆」「居酒屋」「再会」あたりが寓話っぽくて好き。表題作や「生仏」のようなからっとしてブラックな味わいの話もある。

電車男
電車男中野独人(新潮社、2004)。
まとめサイトはすでに読んでいるのだけど、わざわざ本にして面白いのかな? と半信半疑だった。いや、けっこう面白いね。読みながら百面相。カップエルメスと判明するあたり、紅茶はべノアと分かるあたりのゾクゾク感ったらない。前後のレスが大幅にはしょられてるし、2ちゃんねる用語やその場のノリで生まれた造語にもいっさい注がないから、予備知識がないパンピーな人には分からないところが多すぎるのでは……とも思ったのだが、先日NHKラジオのいちコーナーでインターネットについて真面目な話をしているうちにネットで生まれる恋愛のことに話が及び「ベストセラーになった本がありましたね」「キターっていう絵文字が面白いですよね」などと解説者とアナウンサー(どちらも女性)がにわかに盛り上がっていたから、どこか万人に訴えるものがあるのだなと考え直した次第。