読了本

比類なきジーヴス (ウッドハウス・コレクション)
『比類なきジーヴス』P.G.ウッドハウス森村たまき訳(国書刊行会、2005)。
すっごく面白い! 1ページに1回以上は確実に笑いどころがある。ユーモア小説の傑作との名声も伊達じゃないな。いいとこのお坊ちゃまなだけに厄介ごとをしょいこみやすいバーティー・ウースターと、彼の世話をしならが揉め事もかたづけてしまう超有能な執事ジーヴスのコンビが絶妙。たまに冷戦状態に陥るけど、それが必ずバーティーの悪趣味な服装をめぐっての諍いなところがまた笑える。トラブルメイカーの叔母や悪友たちのおかげで面倒に巻き込まれて破滅寸前のバーティーを鮮やかな手腕で救い出すジーヴス、たまにというよりほとんどいつも非合法スレスレなやり方なんだが腹黒く品下って見えないのは彼の人徳か、はたまた執事の威厳のなせるわざか。<ジーヴス>はドロシー・L.セイヤーズ描く執事バンターのモデルと聞いてずっと読みたかった作品。だが残念なことに長らく入手困難だった。このたび新しく翻訳が出たのは喜ばしい限り。コニー・ウィリス犬は勘定に入れません』の執事ベイン&フィンチはもちろん、アイザック・アシモフ黒後家蜘蛛の会』の給仕ヘンリーなどもジーヴスが下敷きになっているのかもしれない。ウッドハウス・コレクションは続けて「よしきた、ジーヴス」「それゆけ、ジーヴス」が刊行予定(全3巻)とのこと。楽しみだー。ちょっとヘンなタイトルだけど。