読了本

ごくらくちんみ
『ごくらくちんみ』杉浦日向子(新潮社、2004)。
いやあ、面白かった。「酒の肴」を題材にしたショートストーリーがぜんぶで68話。酒好きたちの哀しくて優しい人間模様……酒の数、つまみの数だけドラマがある。がん漬け、ばくらい、うずらのぴーたん、リエット、みんでんなす等々、見たことも聞いたことも食べたことも当然ない“珍しい味”がヒナコさんのイラストで紹介されているのも楽しい。よくまあこれだけバラエティにとんだ賛辞を考えつくものだ。たとえば“しおなっとう”は「塩納豆のオークルの肌は悩殺的なめらかさ/芯の残るむちむちした甘みの米麹とからまって/和的エロスの景色」。私も今晩は浮世の憂さを忘れてすてきな肴で美味しいお酒を楽しもう。