読了本

『恋をするエイラ 上中下』ジーン・アウル/中村妙子訳(評論社、1985)。<始原への旅だち>第二部。けっきょく新訳の発売が待ちきれなくて旧訳版の再読をはじめてしまった。ネアンデルタール人の“氏族”を追われたエイラは北上するうちに野生馬の群れる谷を見つけ、そこを住処と定めて孤独な暮らしを始める。一方で西方のクロマニヨン人・ゼランドニー族のジョンダラーは最愛の弟ソノーランとともにドナウの源流を見つける旅を続けるうち、次第にエイラのいる谷へと近づいていく……。
エイラとジョンダラーの章が交互に語られるのでじれったいったらない。思わずジョンダラーは飛ばしてエイラの章だけ先に読んじゃったよ。氏族にとって性行為は食事や狩と同列(ひょっとしたらそれ以下)だが、ジョンダラーたちにとってはもっとも重要な“女神の賜物”なので微に入り細に入り描かれる。第一部とそれ以降ではそのあたりが大きく違うのであった。刊行当時もハーレクインロマンスみたい、と思ったものだが色男ジョンダラーが複雑な性格の持ち主だからこそ物語にも深みが出てくるのだろうな(話がややこしくなる、ともいうけど)。