新選組!

第46回「東へ」。
山本耕史の土方は、私の中でいつのまにか「あり」になってしまった。最初は既存イメージからの逸脱ぶりがいまいましく思え、ことあるごとに粗ばかり探しているようなところがあったのだけどなあ。先入観から自由になったのか、固定観念が上書きされたのか、いまはヤマコー土方が何だかとても好ましいのだ。怒鳴ったり号泣したりしみじみしたり悪びれなかったり。自分が作った新選組が斜陽の時代に入り何一つ思うままにならなくなってからの彼はむしろいきいきとして、本来の自分を取り戻したかのように見える。それにしても田中邦衛のモノマネには笑った。こんなおどけた一面があってもいい。早く色眼鏡なしで初回から観なおしたい。
山崎と島田、尾関、尾形による船中での会話が絶妙だった。4人のスタンスもそれぞれ微妙に違ってて。桂吉弥さん演じる山崎の口癖「よろこんで!」が伏線だったとは思わなんだ……。はじめて人の頼みを断るのが死ぬ間際だなんて辛すぎる。組!の山崎は“顔を覚えられる”ようになってからというもの、名脇役としてドラマを盛り上げてくれていた。彼の品のある立ち居振る舞いと愛嬌たっぷりのキャラがとても好きだった。表情の演技がうまく、声も滑らかできれいな吉弥さんの本業が落語家というのも驚きだがうなずける。ほんとにもっと出番を増やして欲しかったよ三谷さん。
左之助とおまさのホームドラマみたいな一幕もよかった。こういう大河らしくない場面こそが今年の大河の魅力だと思う。おまさちゃんはますますふっくらとして看板のお多福に似てきたなあ。サノの「大陸に渡って山賊に」発言は実際そういう風説があることを踏まえているらしいが、今後それを匂わすような展開があるのだろうか。勝海舟役の野田さんの猫なで声の皮肉と子熊のような怒号の使い分けに笑った。あなたが慶喜のそばにいたなら将軍が部下を捨てて江戸に逃げ帰るなんて酷いまねはさせなかっただろうに。大阪城で近藤がした献策は勝のと寸分たがわぬものだったが、時期を逸した今となってはもはや「時代おくれの剣術屋の悪あがき」でしかないのが哀しい。