読了本

百年佳約 龍秘御天歌 (文春文庫)
『百年佳約』村田喜代子講談社、2004)。
嬉しいことに『龍秘御天歌』の続編なのである。秀吉の朝鮮出兵で連れてこられた陶工一族の長・百婆はしたたかで喰えないばーさんだ。殺しても死にそうになかったのに、冒頭で事故に遭いあっけなく死んでしまったので驚いた。朝鮮では人は死んだら神になる。一族の守り神となった百婆は孫たちの縁結びに頭を悩ますが、そこに息子や嫁の思惑がからみ、さらに習俗の違いから生まれる対立、反目でたいへんな騒ぎに。さてこの顛末やいかに。前作は渡来人の「葬式」、今回は「結婚」がテーマだ。熱い血を持つ渡来人たちの生活が垣間見られてとても面白い。さらに村田さんのユーモラスな筆致が笑いをさそう。嫁とりを夢見る若者の幽霊や、百発百中の薪投げの技を披露する百婆には思わず吹きだした。

『恋愛映画のように、は』菅野彰原作/山田睦月漫画(新書館、2004)。
なかなか素敵なコラボレーション作品となっている。山田さんの描くまっすぐで、さっぱりとして、どこかボーイッシュな大人の女性キャラが好きだ。そこが菅野さんの作風とも合うのかもしれない。表題作はすごく胸にしみた。いとこ同士の結婚のつもりが実は……という話。ぶわーっと盛り上がったりドロドロと堕ちていくようなとこはぜんぜんなく、割と淡々とすすんでいく。「でも人は他人を愛さなくちゃ」という言葉がやさしい。