読了本

八つ墓村 (角川文庫) 花の魔法、白のドラゴン
八つ墓村 金田一耕助ファイル1』横溝正史(角川文庫、2001)。
先日放映された稲垣金田一のドラマに触発された。横溝正史をちゃんと読んだのはこれが初めてかもしれない。イメージはすっかりドラマ版の役者で定着していたが(金田一以外は)さほど違和感もなく、とても楽しめた。辰弥役の藤原竜也はさすがに27歳には見えなかったけれど、原作辰弥もどこか母性本能をくすぐる寂しん坊の甘えっ子だったのでオッケー。ドラマ版は美也子の姐御肌なところや鶴子の儚さが良く出ていたなあとか、典子なしでずいぶんうまいこと話をまとめたもんだなあ、などとあらためて感心した。べたべた春代姉さんと村人総オーク化はちょっとやりすぎだったってことも分かったが。事件後に書かれた手記という形をとっているため「この後こんな恐ろしいことになろうとは思ってもいなかったのだ……」式の記述がたびたび出てくる。ドラマをすでに観ていればこそどうということもないが、先の展開を知らなければさぞかし恐怖感を煽られただろうなあ、とちょっと残念だ。

『花の魔法、白のドラゴン』ダイアナ・ウィン・ジョーンズ/田中薫子訳/佐竹美保絵(徳間書店、2004)。
原著の発行が2003年、DWJの最新作だそうだ。たちまち翻訳が出されるのもハウル映画化の効果か。どんどん新作が読めるのは嬉しいなあ。読むのが追いつけないくらいだけど。やけに分厚いぶん話も複雑で面白かった。まったく接点のなさそうなロディの物語とニックの物語が交差したとたん、糸は織物へと変化していく。極限まで話がもつれあってこれ以上にっちもさっちもいかない! というところから一気にごちゃごちゃの絡まりがほどけていく快感。DWJの魔法の筆さばきは今回も鮮やかだ。続編が出るといいなあ……ぜひ恋が実るところまで描いて欲しい。しかしネタを割ってしまっている邦題はやっぱりいただけないなと思う。こんなに伏線をあからさまにされちゃクライマックスで驚けないもん。佐竹さんのイラストは相変わらず面白い。表紙の意味が分かったときは思わず笑ってしまった。クロヒョウやゾウのミニも可愛いよう。