読了本

暁の円卓〈2〉情熱の歳月 『暁の円卓 1 目覚めの歳月』『暁の円卓 2 情熱の歳月』ラルフ・イーザウ/酒寄進一訳(長崎出版、2004)。
世界を破滅に導こうとする秘密結社<暁の円卓>の計画を知るただ一人の少年、百歳の寿命を予言された<世紀の子>デービッドの戦いを描く大河ロマン。全9巻で完結の予定。
主人公が生まれ育つのは明治のニッポンである。イーザウさんはかなりの親日家と見えるが、紹介される風俗がけっこうトンデモなので、つっこみたくてうずうずさせられた。パラレルな世界なのだと分かっていても日本の読者にはちょっと越えがたいハードルかもしれない。しかし第1次大戦に従軍するためデービッドがヨーロッパに飛び出すと、話がどんどん転がりだして息をもつかせぬ面白さとなっていく。
物語は20世紀の人類史をたどり、偉人や有名人もたくさん登場する。第2巻でオックスフォードに進学したデービッドはあのトールキンにも出会い、人生の真実を見出す重要な鍵を手に入れる(トールキンが語源について考察しだしたときは思わず笑ってしまった)。なかなか尻尾をつかませない<暁の円卓>だが、果たしてデービッドは敵を追い詰めることができるのだろうか。それにしてもこのまま行ったら最終巻の彼はギネス級のハイパー爺さんになってしまいそう。……途中で老けなくなるのかな?

『中国黄金殺人事件 ディー判事シリーズ』ロバート・ファン・フーリック/大室幹雄訳・解説(三省堂、1989)。
ディー判事が手がけた初めての事件を描く。絶版なので図書館で借りた。ディー判事ってまだ30代そこそこなのか。長く豊かなヒゲのおかげでもっと年寄りなのかと思っていた。判事の信頼厚い副官チャオ・タイとマー・ロンとの出会いも描かれ、シリーズの背景を知るのにとても役立った。中国の公案ものに頻出する怪力乱神はなるべく避けたとフーリックはどこかで語っていたが、ラストでちょっぴりきかせた怪談的な描写がいいアクセントになっていて面白い。