原画展

池袋アニメイトで開催中のあとり硅子原画展に行く。
休日でも午前中だったせいかゆっくり見ることができた。モノクロはなくカラーばかり、展示作品は数えてないけど60点以上はあったろうか、とても見ごたえがあった。やっぱり原画は発色がきれいだなと思う。『夏待ち』表紙の赤と青の鮮烈な対比や「やまつみのころびね」の絵の具の微妙なにじみ、「ドッペルゲンガー」のサルスベリの立体感など、じかに見るのでなければ味わえない愉しみを堪能してきた。淡い色合いとホワイトのきらめきが夢のようだ。
未発表・未完成ネーム「歌姫夜話(仮)」39頁のコピーが読めるコーナーもある。初期の作品だそうだ。ラスト1ページはどんな展開になっていたのだろう。デコレーションケーキのようにアレンジされた「友人一同」からのお花が飾ってあった。ちんまりとしてとても可愛らしい。仰々しくないところがいかにもあとりさんのお友達らしいな、と思った。
とにかく混雑していたのが自筆ネーム&ラフの公開スペース。4冊のクリアファイルに收められた大量のラフスケッチやネームを閲覧できる。1冊見終わる度に列の後ろに並び直して1時間以上かかってしまったが、それだけの価値はあった。シャーペン(たぶん)で綺麗に描かれたネームが感動的。たまに出てくるマル描いてちょん、みたいな省略絵になごんだり。ちょこちょこコメントが書き込んであったり、下描きから完成に至るまでの変遷がうかがえたりしてファンにはうれしい企画だった。
イラスト集にも収録されている「仰向けでうたた寝中のメガネ青年をのぞきこむ天使」のイラストは、ラフの段階ではタバコを吸いながら天使を見つめている(メガネなし)。完成形のほうが確かにいいし、色が乗ると天使の愛らしさがアップしてさらに素敵なのだ。タバコといえばネームに焼け焦げを作っていたっけ……あとりさんはスモーカーだったのだろうか。ラフに反古紙や広告の裏まで使っている気取らなさが庶民的で微笑ましい。