明け方の読書

仕事でちょっとばかり嫌なことがあって凹む。
夜中にふと目が覚めたら、急にその時の困惑や苛立ちがよみがえってきた。忘れて寝ようとするほどに眠気が飛んでいく。2時間ねばって寝返りを打ち続けた後で睡眠を断念、起きて本を読むことにする。薄くてすぐに読めそうな文庫を選ぶ。

ベツレヘムの星』アガサ・クリスティー/中村能三訳(ハヤカワ・クリスティー文庫)読了。
キリストがモチーフになっている作品を揃えた短編集。クリスティも敬虔なクリスチャンだったのだなあ(当然か)。クリスマスにぴったり、とずいぶん前に薦められていたのだが思いきりシーズンがずれてしまった。どれもミステリではないけれど、ミステリ作家らしいひねりが加わっていて面白い。
水上バス」がまさに今の気分にぴったりの話で、読んでて気持ちがほぐれた。頭では分かっていても感情がついていかないことが多いと生きていくのは気苦労ばかりで厄介なものだが、ミセス・ハーグリーヴズの見た万華鏡を私もちょっとだけかいま見ることができたかもしれない。
クリスティー文庫の文字の大きさや紙質がこの本に限ってはよく合っていると思う。ミステリだと何故か馴染まず読みにくいので。イラストも愛らしい。仲間内でクリスマスのプレゼント交換しよう、準備する贈り物の予算は500円前後! みたいな企画があった時にふさわしい逸品。とまたシーズンはずれなことを言ってみる。

『ふたりジャネット』テリー・ビッスン中村融編訳(河出書房新社 奇想コレクション)も読了。
ビッスンいいなあ、好きだなぁ。経歴はなかなかにとんがっているのに、作品は何だかとってものどかな感じがする。そしてちょっぴりもの哀しい。熊が火を発見したり、イギリスが波をかきわけて移動しだしたり。奇想コレクション松尾たいこの可愛い装丁もいいよなあ、SFオンチの私でも読んでみたくなるもの。