読了本

『わが愛しき娘たちよ』コニー・ウィリス大森望ほか訳(ハヤカワ文庫)読了。
12編を収録した短編集で、それぞれの話の冒頭にウィリスのコメントがついている。これが読者をケムにまくのだ。「見張り」「サマリア人」に泣かされた。特に「見張り」は『ドゥームズデイ・ブック』『犬は勘定に入れません』が気に入った人にはぜひ読んでほしい。解説で「『見張り』における共産主義者のとらえかた」が批判されているけれど、あれはウィリス自身の無自覚な認識じゃなくて当時のロンドンの人々の認識なんじゃないのかな? 主人公の見解も中立だと思う。
表題作も突出していて面白かったけれど、これが最初に、またウィリスの代表作のように日本で紹介されたのはちょっと損だったかもしれない。「月がとっても青いから」のような正反対の作品も書いてるのだから。「クリアリー家からの手紙」「遠路はるばる」「デイジー、日だまりの中で」はオチが分からなかった……理解力が足りないのかSFマインドが足りないのか。分かりたいのに、もどかしい。

コミックスをいろいろ読んだ。とくに面白かったのが『結界師』と『ラブロマ』。
結界師 1−2』田辺イエロウ小学館)は妖怪とその退治師が出てくるアクションものだが、少年サンデー連載のなかでは久々のヒット(個人的に)。結界術のシンプルさがいい。絵も巧く品がある。ヒロインが無意味に脱いだりしないし。もしかして作者は女性なのかな? 使い魔の妖犬たちもかわいい。しかしなぜ斑尾はオネエ言葉なのよ。って、まさかメスなの?

ラブロマ 1−2』とよ田みのる講談社アフタヌーンKC)。
読んで初めて分かる直球勝負の面白さ。やられた。以前パラパラめくったときに「セックス」「コンドーム」みたいな単語が多く目に付き、そーゆー系の若者青春グラフィティなら興味ないやと決め込んで眼中になかったのが惜しまれた。人を好きになって自分を飾り殻にこもるのをやめた星野君、かっこいいじゃないか。時に乱暴なまでにストレートな根岸さん、かわいいじゃないか。下手をすれば説教臭くなりがちなテーマを、どこかとぼけた味のある絵のタッチと作風で楽しく読ませてくれた。