「見張り」

コニー・ウィリス『わが愛しき娘たちよ』(ハヤカワ文庫)収録の短編「見張り Fire watch」を読む(タイトルには二つの意味がかけてあるのかな?)。
近未来のオックスフォードを舞台にしたタイムトラベル・シリーズのひとつ。時代的には『ドゥームズデイ・ブック』の2年後、『犬は勘定に入れません』の1年前にあたるようだ。おなじみダンワージー先生やキヴリンも出てくるが、ストーリーが繋がっているわけではない。ただ3つを併せて読むとウィリスの描きたかったことがだんだんはっきりしてくるように思う。新作『All Clear』が待ち遠しい(大森さんが訳してくださらないと読めないのでその節はよろしくお願い致します)。
主人公バーソロミュー(は時代人名かもしれない)が降下したのは戦時下のロンドンで、それだけに話のトーンもかなりシリアスだった。やりきれなくてちょっと泣いた。平和な国、平和な時代がおもな舞台だったからこそネッドたちの物語はドタバタコメディでいられたのだなあ、と今の世界情勢をニュースで観ながら思う。日本はコメディというよりは三文芝居だけれど。まああの恥ずかしくもくだらない自己責任論よりは年金未納騒動でマスコミが賑わっているほうがまだマシだ。