読了本

犬は勘定に入れません あるいは、消えたヴィクトリア朝花瓶の謎』コニー・ウィリス大森望訳(早川書房)を再読しおわった。
伏線がたくさん張られている長い物語は再読してこそ面白い。鍋いっぱいに作った二日目のカレーがよりいっそう味わい深く美味しくなるように、ってあんまりいい譬えじゃないけれど。さほどあからさまでない“しかけ”って初読のときは読み飛ばしてしまいがちだが、とにかくウィリスはサービス精神旺盛で、とりこぼしがあっても充分面白いようにたくさんの具材と調味料を盛り込んでいる。だからこんなに分厚い本になったのだともいえるが。
これを再読する前にジェローム・K・ジェローム『ボートの三人男』を読んでおいたのは正解だった。相乗効果でさらに楽しく読めた。そして『ボートの三人男』も大好きになった。パイナップル缶詰のことはやはりネッド(そしてウィリス)も印象的だったらしい。またとても映像的な小説で、ネッドやヴェリティの身振りや表情などは目に見えるようだった。ネッドの脳内風貌はあとがきでも言及されている「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のマイケル・J・フォックスなんだけれど(とくにパート3の)。今もしこの小説が映画化されるとしたら誰が演じるのかな。
さて、4月22日に記した「気になる言葉メモ」の続き。それにしてもずいぶん様々な文学作品や歴史事項が引用されている。そのままキーワードをGoogleにつっこんで分かるのもあり、そうでないのもあり。リストをざっと調べてから再々読にいくつもり。
エロイーズとアベラール/マラトン平野/チャブ/サリクス・バビロニカ/ワトソンとクリック/スティルトン・チーズ/オリアリー夫人の雌牛/ディック・ホイッティントンの猫/ポリー・ヴォーン/ツルカメソウ/クラレット/エリザベス・バレット・ブラウニングとフラッシュ/ドストエフスキーラスコーリニコフ/E.C.ベンソン/あっぱれクライトンP.G.ウッドハウスジーヴズ/すぐりのコーディアル/グッド・ロード(うわあ)/パオロとフランチェスカワーズワースの虹/ヴァルミチェリ/ロッホ・ローモンド/レイディ・ゴダイヴァとピーピング・トム/アンナ・カレーニナとおなじ末路/夜中に吠えなかった犬/クラム/シャデラク、メシャク、アベデネゴ/サー・リチャード・バートンの原稿/カルテック/MGM野外撮影用地(バックロット)。
ところでどうでもいいことだが、トシーが「かあいいかあいいジュジュちゃん」と赤ちゃん言葉で猫をあやすたびに、あーそういえば私も「かあいいかあいいメェメェたん(はぁと)」と愛犬に呼びかけるなあ、と苦笑したことであったよ。まあ私は人前ではやらないけどさ。