読了本

『家守綺譚』梨木香歩(新潮社)。
また「いいもの」を読んでしまった。嬉しいなあ。装丁もすてきだ。“学士綿貫征四郎の著述せし”随筆ふうの幻想譚。疏水の端に住まうとおぼしき貧乏作家の長閑な暮らしぶりが、明治大正の文筆家を思わせる筆致で綴られる(どうやら時代設定もそのあたりらしい)。どこか古風でゆかしい、こういう味わいを出せる作家って歴史もの・時代ものを書く人でも珍しいと思う。風雅でほのぼのなだけじゃない、主人公がまたとぼけた人柄でなんともユーモラスなのだが、怪異はあたりまえのように語られるし、長虫屋のようにどこか不気味な存在も出てくる。しかし名犬ゴローは賢くてかわいいねえ。

『レディー・ヴィクトリアン』3〜8巻まで読了。
レディーになるため田舎から出てきた家庭教師(ガヴァネス)のベルがロンドンで出会った個性的な人々――頼もしき女性雑誌出版社オーナーのノエル、完璧な淑女であるエセル、口の悪い美貌の天才作家アージェントたちとともに繰り広げるロマンティック・ラブコメディ。ドレスのひらひらや花が舞ったりや、たまにはこういうのも目に楽しいね。レディーズ・マガジンって実在したのかな?