読了本

イニシエーション・ラブ<特別限定版> /乾くるみ
初版が出たのは2004年。2015年の映画化に合わせて新たに出し直された。時代設定は1980年代なので、古さが一周回って新しい。にしても、これよく映像化したねえ! いったいどんなふうにアレンジしたんだろ。side-Bの男のゲスっぷりに呆れつつ、side-Aの頃はウブかったのに都会の歳月が人を変えたのか……なんて思っていたら、もうびっくりですよ。女はしたたかだ、というより女の子はいつだって幸せになりたいのだ。そういう意味では失敗から学べたマユはかしこい。ただ通過しただけじゃ何も得られない、という見本みたいな美弥子はこれからも見る目を養えないままでいそうだな。

あずかりやさん/大山淳子
なんでもあずかる、あずかり賃は一日100円、というニッチな商売を営む青年は目が見えない。でも店主は愛されている。お店ののれんやガラスケースや猫の社長に。現実はもっとせちがらいけれど、こんな“大人の童話”があってもいい。「ミスター・クリスティ」と「トロイメライ」が好きだったな。男性視点(モノだけど)のほうが話も引き締まっててよい感じ。