読了本

人魚と金魚鉢/市井豊
大学を舞台にした日常の謎もの、〈聴き屋〉シリーズ2作目。といっても今回の聴き屋はあんまり傾聴してなくて、どっちかといえば語り屋・問い屋だったけど。ミステリとしては軽めだが、主人公をはじめとする個性的なキャラ(というよりモロ変人)たちがわーわー大騒ぎするのが愉快なので、サークルをあげての鬼ごっこが展開する「愚者は春に隠れる」がとくに面白かった。それにしても相変わらずおばけな“先輩”は謎でかわいい。スカイエマの挿絵もキャラの特徴をとらえていて楽しい。

十二月八日の幻影

十二月八日の幻影

十二月八日の幻影/直原冬明
日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作。なるほど「文学」なんだ、エンタメじゃないんだ。描かれるのは日米開戦前夜の諜報戦。なかなか手強いうえ決して好みのテーマではないにもかかわらず最後まで読まされてしまった。表紙がこんなにソフトでお耽美じゃないほうが本来の読者に届きそうな気もするが。しかし当時のおのこどもの女を格下に見る風潮といったら……とやや引いてたら、それがまさかの伏線だったとは。