読了本

狗賓(ぐひん)童子の島

狗賓(ぐひん)童子の島

狗賓童子の島/飯嶋和一
『出星前夜』から6年半、寡作で有名な飯嶋さんの新作は大塩平八郎の乱に加担した親の罪に連座し、隠岐に流されることになった少年の物語だった。険しい山を一歩ずつ登っていくような気持ちで読み進めていったが、さすがに面白かった。“流人の島といえばこの世の地獄”な先入観は打ち砕かれ、“お上に楯突く謀反人”という大塩一党のイメージも覆される。医術をまなび病魔とたたかう『JIN』の世界な中盤も読み応えがあったが、常太郎の境遇でグレもせず世のために働くとはいい人すぎるだろう。と思いつつも以降の隠岐の状況がもうそれどころじゃなくて。もろ幕末という時代背景に島民が翻弄された隠岐騒動は辛すぎた。いつの世も虐げられ搾取される庶民。今の時代も例外ではないのだろう。少しはマシなのかな……いやいや……。しかしこんなところで終わるなんて、続きが気になりすぎる。