読了本

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス (文春文庫)

その女アレックス/ピエール・ルメートル著、橘明美
面白かった! 第一部で監禁され虐待を受けていた孤独な女が、第二部では希代の悪女かと思われ、第三部では……。こんなところでは死ねない、と生にしがみついた理由に戦慄。誘拐事件を捜査するカミーユ警部のパートでは、男たちがタッグを組んで謎に迫る。ラストはちょっと驚きだった。意気に感じてシナリオに乗ったのかねやっぱり。けどそれアリなの?と思わなくもないが。ヴェルーヴェン班ではドケチのアルマンが特によかった。これシリーズものなら前作から訳して出してほしいなあ。前作はカミーユがかなり可哀想っぽいけど……。

機龍警察 火宅/月村了衛
シリーズのサイドストーリーを集めた短編集。長編のような読み応えはないものの、内容はけっこうヘビー。それに仏教用語のサブタイトルが付くところが意味深。仕事と家庭のはざまで悩む宮近理事官の姿を描いた「勤行」のような話は本編には織り込みづらいと思うが、いちばん面白かった。あと少年時代の由起谷を描いた「沙弥」もよかった。私はまだシリーズ1作目しか読んでないので、いろいろ気づけなかった部分もあったかも。

小旋風の夢絃

小旋風の夢絃

小旋風の夢絃/小島環
中華伝奇譚。面白かった。最初はちょっとゴチャゴチャしてるかなと思ったんだけど、だんだん引き込まれていった。具体的には涓涓が小旋風のものになろうと迫ってくるあたりから(笑)。盗掘した琴でひと財産築こうとする少年と、音楽に魅入られたバケモノ楽師、本来なら噛み合わないはずのふたりの心がふと触れあって、響き始めた余韻が徐々に大きくなっていった感じ。作者はこれからも中国ものを書くのかな? 楽しみだ。