読了本

まるまるの毬

まるまるの毬

まるまるの毬/西條奈加
南星屋は若い頃に諸国を巡り歩いて修行した職人の作る珍しいお菓子がどれも美味いと評判の店である。……お菓子作りがネタの時代もの、最近増えたね。どれもそれぞれ個性があって面白いが、西條さんのこれは連作短編で毎回かなりシリアスな事件が持ち上がる。それがどんどん壮大になっていくので焦った! 治兵衛の出自が二段仕込みとは恐れ入った。いつも元気なお君と、偏屈だけど兄思いな石海がとてもよかった。河路が武士をやめて治兵衛に弟子入りするのをちょっと期待してたんだけど、そうもいかないか。柑子屋との確執など、甘いものを食べる幸せにほんの少し人生の苦みをきかせることで深みのある作品になっていると思う。