読了本

櫛挽道守

櫛挽道守

櫛挽道守(くしひきちもり)/木内昇
木曽路の宿場町である藪原を舞台に、「お六櫛(おろくぐし)」作りの名手である父を誇りに思い、その技を身につけたいと願う娘の人生が、幕末の動乱と絡めて語られる。とても面白かった。派手なシーンはまったくないどころか、積もっていくばかりの鬱屈を持て余すような展開がずーっと続くけど、そこで破滅的なオチへとは持っていかずに清々しさを残して終わるのが木内さんらしい。いきなり視界がぱあっと開けるようなラストはよかったなあ。端正な文章と骨太の筆致、地味が滋味に通じる作風はちょっと藤沢周平を思わせる。木内さんの今後が楽しみ。