読了本

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

美雪晴れ―みをつくし料理帖 (時代小説文庫)

美雪晴れ みをつくし料理帖/高田郁
シリーズ9作目。采女や富三みたいなどぎつい悪役が澪をいびることもなく、逆にそっと見守り手を貸す者が増えて、どちらかといえば地味な展開だったように思うが、だからこそ各人物の心理描写が細やかで読み応えがあった。澪もとるべき道筋には多少迷いつつも、進むべき方向は定まっているので、何があっても大丈夫という安定感がある(小松原との恋愛中が一番ぐらんぐらんだったよね)。最終巻に向けてのタメの巻としてはよいのではないかな、だって次の巻でそうとう波乱がないと大団円になだれこめそうにないんだもん。
懸案事項はまず佐兵衛の復帰と天満一兆庵の再建、これは一柳の跡を継ぐかたちで果たされそうな? 鼈甲珠の売れ行きと野江の身請け、さてどうやって四千両ひねりだすのか、でも摂津屋が助ける気まんまんだからなぁ。澪と源斉先生の行く末については今回かなり進展したと思うのだがどうか!? 澪が作りたい「食べるひとを健やかにする料理」は源斉の存在があってこそ、と澪もはっきり自覚したのでは? しかし源斉先生、涙ぬぐうだけってほんっと奥ゆかしいな。そこで甘いムードになったりしない淡白なとこも魅力なんだけど、じれったい。
いったいぜんたい過去に登龍楼と何があったのか、ここまできてまだ引っ張るとは。たぶん吉原での料理バトルにおいて明らかになるのだろう。美緒のその後も気になるし、小松菜の根の牡丹の花は今回使われなかったし、あと采女宅の妙な匂いとかも言及なしだったが、そういうのも全部ラストまでに拾われるのか? 野江を身請けできたとして、その後はどうするのか? 旭日昇天の易はどうなった? そして澪はどういう料理人になるのか? ああ、半年後が待ち遠しい!