読了本

漂砂のうたう (集英社文庫)

漂砂のうたう (集英社文庫)

漂砂のうたう木内昇
明治初期の根津遊郭を舞台にした時代もの。直木賞受賞作。木内さんは浮世女房洒落日記 (中公文庫)笑い三年、泣き三月。のようなユーモラスなのを描くいっぽうで、こういううす暗い虚無も描く。作風の振れ幅が大きいというより、同じ状況でもとらえ方の違いでがらりと変わるのだろう。遣手のおばさんも噺家のポン太も、あばた顔の嘉吉も人間臭くて滑稽味のあるキャラだが、定九郎のような善にも悪にも徹しきれない中途半端な男とっては、愚かで嫌味で不気味な奴らでしかなかった。ただこれからは変わっていくのかな。彼を閉じ込めていた檻は、彼の中にのみ存在してたのだから。

便利屋サルコリ

便利屋サルコリ

便利屋サルコリ/両角長彦
メンバーの猿田、骨崎、リサコの頭を取ってサルコリと名付けた便利屋(というか探偵事務所)がさまざまな事件に巻き込まれる。ブラックコメディ的な連作短編ミステリ。サラッと読めて後に残るものはないけれど、テンポが良く一話一話がけっこう捻ってあって面白かった。「学校じゃ教えてくれないこと」「尾行練習」あたりが特によかった。猿田の鬼畜な俺様っぷりや豊富なアクションはドラマ化したら映えそう。