読了本

テ・鉄輪(かなわ)

テ・鉄輪(かなわ)

テ・鉄輪/入江敦彦
京都を舞台にした現代ホラー。まさかイケズの構造 (新潮文庫)の著者がこんなに面白い小説も書くとは。縁切りで名高い鉄輪の井戸から汲んだ水を使う町屋カフェの女主人キリと、その友人(という名の下僕)のセンセが出会う怪異は、京都という土地柄と結びついているだけに品がありながらも物凄くイヤーな感じに怖い。愛人を剪定するくだりとか怖気を振るったわぁ……。でもキリさんがクールにまとめてくれるから読後感は悪くない。食べ物が美味しそうなのも良い。表紙で乱舞しているのは第1話で出てきた和菓子「玉ゆら」? 「中村軒 玉ゆら」でググったら出てきた。もっと続きを読みたいなあ。以下余談。風邪で長いこと臥せりつつこれを読んでるうちにどんどん具合が悪くなっていったのだが、読み終わってひと寝入りしたらケロッと回復していた。鉄輪の女が風邪との縁を切ってくれたのだろーか……。

夢も定かに

夢も定かに

夢も定かに/澤田瞳子
奈良時代後宮に勤める若き女官、新米采女の若子、恋多き美女の春世、才気煥発な笠女をめぐるドラマ。なかなか面白かった。『孤鷹の天』asin:4198937419asin:4198937427でも思ったけどいい意味で少女小説的な雰囲気がある。コバルト文庫とかに入っててもおかしくない。会話が現代的で、歴史ものにありがちな古臭さを感じさせないが、時代背景はうまく取り入んでいる。首(おびと)天王って聖武天皇なのね。ラストに意味ありげに年月日の記載があるので日本史年表で調べてみたら、2年後に大事件が。そんでウィキで房前の項を見てたら、妻:阿波采女って! 因幡八上采女とかも歴史上では有名なんだ。笠女は飯高諸高のようだし、登場人物はかなり史実通りらしい。春世の顛末は忘れがたい。彼女が幸せになりますように……、ってあのしたたかさなら心配ないか。