読了本

ひょうたん (光文社時代小説文庫)

ひょうたん (光文社時代小説文庫)

ひょうたん/宇江佐真理
後日談的スピンオフの「夜鳴きめし屋」が面白かったので読んでみた。『夜鳴きめし屋』の主人公だった長五郎の両親で、古道具屋を営む音松とお鈴夫婦が現役だった頃の話。こちらも面白かった。個人的にはこの『ひょうたん』のほうが好みかも。しっかりもののお鈴に、悪友たちと馬鹿ばっかり言ってる音松。どうにも頼りない夫だが、意外と懐が深く器の大きなところをみせたりもする。どちらにせよ細かいことは気にしない人の好いところは似たもの夫婦だ。菱屋の小僧をつとめてた長五郎はかなりこまっしゃくれた子どもで思わず笑ってしまった。食事風景も楽しい。ごはんがおいしそうな小説はいい小説だ。

ふちなしのかがみ (角川文庫)

ふちなしのかがみ (角川文庫)

ふちなしのかがみ/辻村深月
あれ、読んだことある? と途中で思って、確認してみたらやっぱりハードカバーで読んでた。でもほとんど内容忘れてた……。というか、前読んだときは怪談にしてはわりと論理的な感じで話が進む(花子さんなんかは特に)のにいつもラストが不条理っぽいので、え? え? 何? 意味がわからん、どうなったの? と混乱しっぱなしだった、ような。でもそれが不満なんじゃなくて、むしろ面白かったんだよな。筋が通らないところも含めて。訳がわからないから怖いわけだし。いや、怖いというより、仄かな不安感が心地よかったのかな。表題作には気持ちよく騙された。うまいね。初読のときオチが分からなかった「おとうさん、したいがあるよ」はやっぱりよく分からず、ちょっと悔しい。現実と幻覚が混じってるのか……? 表紙イラストがなかなか凝ってて、ちゃんと本文に即してるのがいい。