読了本

雪と珊瑚と

雪と珊瑚と

雪と珊瑚と/梨木香歩
若い女性が赤ちゃんを育てながら起業してカフェを開く。それを梨木さんが書くとこうなるのか〜と、そこがいちばんおもしろかった(例えば桜庭さんなんかが書いたらぜんぜん違う展開になるだろうな! とか想像してみたり)。様々なお客のエピソードや飲食店ならではのハプニングが綴られていても、いわゆる細腕繁盛記として読ませるのとはちょっと違ってて。人と人との繋がりの形はいろいろで、正解があることでもないんだな……と考えさせるようなところがとても梨木さんらしかった。くららをはじめ珊瑚の周りの人々がいい人すぎる気がして、最初のうち物語がやや甘めだなと思ったのだが、後半は苦味や辛みが加わって複雑な味わいに化けた。梨木作品のなかでは『西の魔女が死んだ』に近いかもしれない。雪が小学生くらいになった頃、お店がどうなってるのか興味はあれど、続編が書かれるような感じの話でもないのかな……。雪視点のスピンオフとか、あるといいのにな。