読了本

浮世女房洒落日記 (中公文庫)

浮世女房洒落日記 (中公文庫)

浮世女房洒落日記/木内昇
なにこれ楽しい。本編はタイトルどおり市井のおかみさんの日常をシャレのきいた筆致で綴ったコージーミステリならぬ“コージー時代小説”。きょうは何食べたとかどんな年中行事があったとか、夫婦喧嘩の理由から縁結びの顛末までが逐一書いてある。江戸っ子亭主が長州侍と揉めるくだりなんて吹き出してしまった。こういうの好きだなあ、もっと読んでいたかった。
ところでこの日記にはちょっと奇妙な前フリが付いている。「窓、洗剤では拭かんで」と言う山椒魚のような何か……とか、なんとなく波津彬子の描くコミカルなファンタジーっぽい趣。はたしてお葛の日記はホンモノなのか贋作なのか、それとも人ならぬものの置き土産なのか? 面白かったから著者の他の作品も読んでみよう。おやっ、おととし『漂砂のうたう』で直木賞とった人だったのか。