読了本

無花果の実のなるころに

無花果の実のなるころに

無花果の実のなるころに/西條奈加
著者初の現代ものかな? といっても舞台はやや古風で、東京の下町と市井の長屋とは地続きなんだなあとあらためて思わされる。料理上手な男の子ノゾミちゃんと元芸者のお蔦さんがコンビを組む、とっても美味しそうな“日常の謎”系ミステリで、ホームズなのはおもにお蔦さんのほうだけど、実は怒らせると怖いノゾミちゃんがぶっちぎれてお蔦さんとの血の繋がりを証明する書き下し「シナガワ戦争」はなかなか血沸き肉躍る青春ものな感じで面白かった。

嘆きのテディベア事件 (創元推理文庫)

嘆きのテディベア事件 (創元推理文庫)

嘆きのテディベア事件/ジョン・J・ラム著、阿尾正子訳
怪我がもとで退職した刑事とテディベア作家の妻によるおしどり探偵もの、シリーズ第1作。ハードボイルドとコージーのバランスが絶妙で面白かった! 主人公ブラッドは妻アシュを愛しているだけでなく趣味や考え方までもおんなじなので(もちろんテディベアについても)、夫婦が協力しあうと向かうところ敵なしなのがとっても楽しい。熟年カップルだけど枯れてはいず、ロマンスものというほどベタ甘でもないのは作者が男性だからですかね。重たさや甘さをひきしめているのは、随所にピリッときかせたユーモアと、洗練なんてくそくらえな南部気質だ。脇役も魅力的。それにしても、ミシンは簡単に使いこなせるようになるわよと言われて「そう願うよ。間違ったボタンを押して、ハルマゲドンへのカウントダウンがはじまってしまったら困るからね」なんて返すような日常会話をアメリカ人はホントにしてるのだろーか(笑)。