読了本

新地橋 (講談社文庫)

新地橋 (講談社文庫)

新地橋 深川澪通り木戸番小屋/北原亞以子
シリーズ3作目。バッドエンドなわけではないけど大団円にはほど遠い、けっこうビターな味わいの短編が続く連作集なのだが、不思議と気が滅入らない。 「十八年」なんか、どう考えても伊与吉が幼稚なやなやつで、真面目な藤松にばかり同情が集まりそうなもんなのだが、実際は逆で……。ほんと、何がどう転ぶか分からない。人生の機微を描いて秀逸な一編と思う。

空き家課まぼろし譚 (講談社ノベルス)

空き家課まぼろし譚 (講談社ノベルス)

空き家課まぼろし譚/ほしおさなえ
架空の都市を舞台にした、日常の謎系ミステリ&ファンタジー連作短編集。なかなか面白かった。まがりなりにも社会人の明青年を素で子分扱いする強気な少女・汀は、撮られた場所で写真に触れるとその場面を再現できるという不思議な能力を持っている。でもその“魔法”が謎解きの万能鍵として便利に使われてないところはいいなあ。特に「オルガン奏者」は……切ない。終盤の明の告白は、ちょっと唐突ではあるけど、今となっては「そういうことは、あるんだ」と真に迫って感じられる。ところでイケメンもどきこと友坂さんが汀ちゃんに握られてる弱みって何だったんだろね?