読了本

ストーリー・セラー

ストーリー・セラー

ストーリー・セラー/有川浩
電撃キスとか、作者はこういうシチュ好きだねぇと苦笑してたら話がどんどん過酷な方向に流れていくのでビビった。しかも男前な作家の妻というキャラクターからして“生っぽさ”がかなり顕著で、やや常軌を逸した親族との溝や精神疾患など他の作品でも見かけた設定が多いしで、意外と引き出しが少ないというか、引き出しの中にあるものしか描けないタイプだったのか? と思ってしまった。でもSide:Bのラストがアレだから確信犯的に描いてるのだろうなぁ。面白いかどうかは微妙だけれど。フィクションであればこそ安心して人の幸不幸を楽しめるのであって、虚構に昇華してないものをエンタメとは受け取りづらい。少なくとも私はそうだ。なのでああいうオチで作者に挑まれても戸惑ってしまう。それだけに冒頭の“安いSF設定”は蛇足だったように思う。こっちがウソならあっちは本当と言ってるようなもんじゃないか? ぜーんぶ創作というなら確かに安っぽい設定だし。あと状況が状況だけに仕方ないのかもしれないけれど、夫婦以外の家族親戚、そして医療者に対する攻撃性がかなり強いなぁとも感じた(“神”にまで喧嘩売ってたけど)。ふたりだけの世界を作る主人公たちにちょっと引いた……すなおに感情移入できなくて申し訳ない。正直、有川さんのアグレッシブさが悪い方に転んだ作品という印象。でもこれ今年の本屋大賞にノミネートされたのか。