読了本

球体の蛇

球体の蛇

球体の蛇/道尾秀介
ミステリの香りの残る純文学のような物語。むー、中途半端、ってことかも。フィクションにしても偶然が重なりすぎでは、それもありがちな方向に……などとも思ったし、自己憐憫の強い主人公にも共感できなかったし。ナオが真相を秘密にしておく必要もないのでやっぱりあれは「優しい嘘」だったのかな。そこまでしてかばってやりたいような奴でもないよなあ、なんで乙太郎さん含めみんな主人公のことが好きなんだろ。サヨも智子も描きようによってはもっと凄みが出たように思うのだが、どうもいまひとつパッとせずもったいなかった。まあこれが純文学というものかもしれんね……話を盛り上げよう、読者を驚かせ楽しませようという気のなさが(←偏見)。唯一よかったのは乙太郎さんの存在だなぁ。残念ながらフェードアウトしちゃったけど。彼が「胸にかかえていたもの」、そこはもっとつっこんでほしかったのに、さらっと流した主人公が憎らしかった(笑)。主人公×女たちじゃなくて主人公×乙太郎を物語の柱に据えて書くとか、第二部は乙太郎視点、第三部はナオ視点、とか変化をつけてたら面白かったかも。何だか「かも」ばっかりだ。