読了本

フリーター、家を買う。

フリーター、家を買う。

フリーター、家を買う。有川浩
Web連載の単行本化。ちょっと見ない切り口で面白い作品ではある。でも終盤の猫を拾った後のくだりがなぁ。ノーカンなからましかば、と当時も思ったのだがやっぱりアレはいただけない。なんせ唐突だからねぇ、誠治の行動も言い草も……。それまで就活や精神病や土木工事のことはよく調べて丹念に描いていたのに、恋愛ネタだけが取って付けたような雑な扱いで。手癖で慌てて描いてしまったのか、それとも編集サイドからねじこめと言われたのか。書き下ろしで多少フォローされたのが救いだけれど(言葉が重くても行動が軽いんじゃ辻褄が合わないが)、連載当時はそれもなかったからなぁ。なんじゃこりゃーと画面の前でつっぷした想い出の最終回でございましたよ。徐々に関係を深めていってくれたならよかったのに。ノーカンの前後がなくても生真面目で不器用なふたりの関係を描くのになんの支障もないしさ。個人的にあそこだけがすごい浮いてるというか、積み上げてきたものをガタガタガタと崩してくれたというか、新築物件の柱に残る逆トゲのようで気になって仕方ないのだった。主人公の成長を描く前半部分の比重が大きくなりすぎて、社内恋愛方面を育てていく余裕がなくなってしまったのかもなぁ。まあいいんだけどね……と言いつつ今も拘っている私。