読了本

烏金

烏金

烏金/西條奈加
金貸しの因業婆の家にまんまと入り込んだ浅吉。悪い男ではないようだが、彼の思惑はいったい……? 一人称「おれ」の時代小説ってちょっと珍しい。読みやすくて面白かった。浅吉の“秘密”は最後まで明かされないのだけど、経済というにはいささか所帯じみた地道なやりくりによる金儲け、および様々な事情をかかえた顧客たちとの交流でじゅうぶん読ませてくれた。これが相場を動かしてどうこう、とかいう話だったらちょっと馴染めなかったものな。長谷部家の人々はよかった。口の悪いお吟が「あの薙刀婆」と呼んだ母上はとくにお見事。稲荷鮨、食べたくなってしまった。この作者のほかの作品も読もう。