読了本

船に乗れ!(2) 独奏

船に乗れ!(2) 独奏

ドイツから帰ったあとで発覚した事件のことは、何でそうなっちゃうんだよ……と虚しかったものの、若さゆえのあやまちから情熱を傾けていたものをまるまる棒にふった人には同情の余地があるし、方向は違っても決して将来の幸せに繋がらないわけではなかろうとしんみり思ったりもしたのだが。1巻でほのめかされてた金窪先生関係の「悪いこと」はなんかもうホントにサイアクだった。もはや主人公が音楽に救われて欲しいとは思えないな……。というか先生が音楽に少しでも慰められることがあるならそうあってほしいけれど、彼は音楽にまったく価値を見出してないみたいだからねえ。ましてやこんなことがあった後では。まあ主人公が思っていたほど恨んだりはらわたが煮えくり返ったりはしてないような気はする。先生にはソクラテスがいるから大丈夫。さて3巻でこれらの苦しみは昇華されるのだろうか。主人公にとって音楽とはなんなのか。過去の回想であることをさっぴいても、まだいささか主人公は苦しみ足りない、自己憐憫が強すぎるんじゃないかと冷めた目で見てしまう私がいる。なので次の巻ではそういう読者の気持ちをひっくり返すような、それでいて鬱じゃない展開が待っているといいなと思う。