読了本

五郎治殿御始末 (新潮文庫)

五郎治殿御始末 (新潮文庫)

もとは中公文庫だったのが新潮文庫で出しなおし。江戸から明治へと時代が移るにあたり、もっとも順応するのに苦労したのが武士である。彼らが歯を食いしばり、もがき、あがき、涙を呑んで時代の垣根を越えていくさまを描いた短編6作は濃厚な浅田節にいろどられていて、畠中作品とは別の意味で「いっつもおんなじ感触」なのだけれど、そう思っていてさえ毎回胸にこみあげてくるものがあるのだから、もう降参するほかない。「遠い砲音」「柘榴坂の仇討」がとくに印象に残った。