読了本

猫を抱いて象と泳ぐ

猫を抱いて象と泳ぐ

“リトル・アリョーヒン”と呼ばれた栄光なき無名天才チェスプレイヤーの生涯を描いた長編。はじめから終いまでべそべそ泣いてる私をなんとかしてくれ……。決してお涙頂戴の物語ではなく、小川洋子だから筆致も穏やかで淡々としててときどき妙にエロティックだったりするんだけど、素直に心が震えてしまうのだからしょうがない。リトル・アリョーヒンはまるで実在の人物のようにリアルで、幻想小説の登場人物のように儚い。華やかさとは無縁の人生だったが彼の傍らには常に寄り添い支えてくれる人々がいた。多くは望まずささやかな幸せを大切にしていた。それだけで奇跡といいたいような気持ちになるよなー……。

夏の小鳥たち (1976年)

夏の小鳥たち (1976年)

七つの海を照らす星に登場した重要な小道具。30年以上前に出版された児童書で、すでに絶版だが地元の図書館で所蔵してくれてたので借りてきた。読んでみたいと思わせるような使われ方をしていたのですよ、『七つの海〜』の中で。とあるイギリス片田舎の子どもたちが不思議な少年に空の飛び方を教わり縦横無尽にとばしまくるというローファンタジーなのだが、直がこの本に託した思いが何となく分かるような気がしてしんみり。『七つの海〜』が書かれた理由のひとつとしてこの本に日の目をみせたかったというのがあるのかもしれないな。ラストは天沢退二郎の本と間違えたかと一瞬思ってしまうような展開でびっくりした。
七つの海を照らす星

七つの海を照らす星