読了本

七つの死者の囁き (新潮文庫)

七つの死者の囁き (新潮文庫)

“死者”をテーマにしたアンソロジー。どれも小説新潮に掲載された短編だが、初出年がバラバラなところを見ると最初からそういう縛りがあって書かれたわけではないらしい。恒川光太郎の「夕闇地蔵」は他のとちょっと毛色が変わっていて、なおかつもっとも死の匂いが濃厚な作品。死を思うということは生を感じるということでもあるのだった。吉来駿作「嘘をついた」は幽霊がどうこうよりも何で通りすがりの“オッサン”とこんなに仲良くなってるのか、チリ怪しすぎなのに何故この翔くんはこんなにも無防備なのか、というあたりに変な気持ち悪さが残って、かえって奇妙な味わいを醸しだしていた(決してうまくはない、とは思う)。