読了本

末世炎上 (講談社文庫)

末世炎上 (講談社文庫)

遷都してからすでに260年は経つ京の都。出世と無縁のなまけ役人・音近、貴族の悪たれ美少年・風見、豊かな髪を持つ貧民の娘・髪奈女――まったく繋がりを持たないはずの三人は数奇な運命に引き寄せられ、ある重要な役割を担うことになる。謎のカギを握る記憶のかなたの女人“吉子”とは?
諸田さんは近世から古代まで自由自在に書きこなす女流時代小説家だ。この作品は平安時代が舞台だが、世情などに現代と通じるところがあって、人物も活き活きと描かれてるのであまり気負わずに読める。脇にも面白いキャラがたくさんいるんだよな、ひょうきんな従者の矢兵太や日記ぐるいの秋実、それに謎の美女・烏羽玉……。
ミステリじたてでもあり、200年前と今(髪奈女たちの時代)の因縁が錯綜する伝奇物語でもあるという盛り沢山ぶり。分厚さも何のその、謎に惹かれてどんどん読んでいくと思いも寄らない結末が待っている。髪奈女の変貌には仰天した。うわーぜんぜん別人だよ! うまいねえ。