読了本

ラブコメ今昔

ラブコメ今昔

自衛隊員が繰り広げる恋愛模様、「クジラの彼」に続くシリーズ第二弾。カップル的には「軍事とオタクと彼」の年下特撮マニア自衛官と営業職の関西弁ねーさんが好きだったが、話として面白かったのは「ダンディ・ライオン」。初対面のときから衝突してた間柄が距離を縮めていくシチュは、仲良いのがケンカのすえ仲直りする話より楽しい。しかも表題作に繋がるしかけがますます心にくい。

 不祥事を起こすけしからん隊員が出る度に、あるいは組織ぐるみで迂闊を踏む度に厳しく糾弾されるのは国家防衛部隊として当然のことではあるが、一人一人は懸命にこうして訓練を積んで働いているのだ、と――それを強硬に主張するのではなく、どうか伝わってほしいと願っているかのような真摯な写真だった。(『ダンディ・ライオン』)


これを写真のかわりに小説でやってる有川さんだが、どんだけこつこつイメージアップをはかっても迂闊でけしからん面々がしでかす事件の痛手のほうが大きい。それでも組織のイメージで個人を見がちな世間に、自衛隊員も生身の人間であることを知ってほしいという思いがある限り、有川さんはこういう作品を描きつづけるのだろう。ほとんど賽の河原であろうと。