読了本

狐狸の恋 お鳥見女房

狐狸の恋 お鳥見女房

シリーズ第4巻。あっちにもこっちにも頭痛の種があり、解決するのは容易ではないと思われたのに、終盤の展開はまるで魔法のようだった。まあ鷹姫に関する珠世の妙案は、あまりにも簡単にことが運んだので拍子抜けだったけれど、その前の雄弁な伴之助、そして過去を水に流した綾には目頭が熱くなった。武家ならではの軋轢もあれば、武家ならではの歩み寄りもあるのだな。次巻ではめでたいことが続きそう。単行本になるまで待てないから連載雑誌のバックナンバーを図書館で借りてこよう。

碧血剣〈3〉北京落城 (徳間文庫)

碧血剣〈3〉北京落城 (徳間文庫)

最終巻。五毒教の教主・何鉄手という型破りなヒロインが登場する。どのへんが型破りかというと、他の女性キャラが抜け出せない女の業(というか固定観念?)からあっさり飛び出していくあたり。一度は恋に迷うんだけど、その後の身の処し方はみごとで、ヤキモチ焼きの青青などは子どもっぽくみえてしまうほど。美貌もしなも彼女の武器のひとつで、やたら腕が立つのもかっこいい。「そりゃあね、人殺しはおもしろいですわよ。でも、武芸のできる人を選んで殺さないことには……」という言い分、すごくないですか。惚れるわー。
物語はわりとあっさり風呂敷たたんで終るが、承志を李自成に就かせてしまったうえは話を発展させようもなかったのかも。何鉄手あらため何煬守の活躍がもっと欲しかったのは作者も同じだったのか、『鹿鼎記』にふたたび登場してるらしい。そういえば金庸作品は『鹿鼎記』だけ未読なんだよな。もったいなくて。

[rakuten:book:10986121:image] [rakuten:book:10993247:image] [rakuten:book:10999522:image]

amazonでは文庫版の書影が出ないので楽天の画像を並べてみる。ちょっと小さめだが骸骨が次第に肉付けされてく様子がわかるだろうか。確かに金蛇郎君は3巻のエピソードまで描かれて初めて生身の人間らしくなるかも。温儀とのメロドラマをひっくり返すような何紅薬への仕打ちには思わずのけぞった。人間ってほんと善悪で割り切れない生き物というか……それでも夏雪宜は邪悪というより、どこまでも自分のやりたいようにやっただけ、みたいな単純明快さがあって憎めない。金庸のキャラってみんなそんな感じではあるけど。