読了本

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

幻色江戸ごよみ (新潮文庫)

時代ものの短編集。どの話も趣向が凝らされてて、短いのに読みごたえがある。けれどどこか恐ろしいような、妙に不安が残るような感じのするものが多い。「紙吹雪」は宮部さんの現代ものサスペンス長編より怖かったくらい。「紅の玉」「神無月」も長編に通じるものがありながら、長編のボリュームに負けてない。「首吊り御本尊」のユーモアと哀しみのないまぜになった雰囲気も好きだった。
ところで「初ものがたり」の続編はまだ出てなかったのか。謎の稲荷寿司屋台の親父がまだ謎のままだったとは……道理でさっぱり記憶にないと思った(ちょっと安心)。茂七親分は『かまいたち』『震える岩』『天狗風』とも関係してるらしいから続けて再読するかな。

鷹姫さま―お鳥見女房 (新潮文庫)

鷹姫さま―お鳥見女房 (新潮文庫)

シリーズ第3巻。どんどん面白くなるねえ。珠世は慈愛に満ちた女性だけど闇雲なお人よしではなく、人を見る目はわりとシビア。なのに説教くさくも突き放した感じにもならない懐の深さがある。「雪夜の客」で隣家のしょーもない主人と話をするくだりはよかった。長男久太郎のロマンスが急展開してきてドキドキものだが、久太郎が節を曲げて婿入りするのも、恵以が貧乏を物ともせず嫁入ってくるのもちょっと想像できないな……どうなるんだろ。