読了本

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)

本所深川ふしぎ草紙 (新潮文庫)

本所七不思議を題材に下町人情の世界を描いた時代物の短編集。「置いてけ掘」と「足洗い屋敷」が切なくて好きだった。そういえばどちらも茂七親分が“仕掛ける”話だな。『初ものがたり』で主役をつとめた茂七親分はこちらではまだ脇役だけれど、事件の渦中にいる人物の視点で語られる物語をひっくり返して引き締める重要な役割も担っているのだった。池上冬樹の解説に「作者は長編では、ひねりをきかし、物語を少し複雑にする悪いクセがあり、人物の思いが趣向に埋没してしまうところがあるが……」とあるのに思わずうなずく。宮部さんの短編はシンプルなのに鮮やかで面白いよね。