読了本

顔をなくした女―〈わたし〉探しの精神病理 (岩波現代文庫―社会)

顔をなくした女―〈わたし〉探しの精神病理 (岩波現代文庫―社会)

法月綸太郎本格ミステリ・アンソロジー』で「下手なミステリよりはるかに読みごたえが」あるとコメントされていた本。とても面白かった。精神科の診療を患者のこころの謎解きにみたてるなら、大平さんは名探偵の部類に入るのだろう。なかでもアンソロジーに収録されていた「偽患者の経歴」は推理の鮮やかさが光る一編だ。真相が明らかになったとき驚いてしまった。「男が上人になった経緯」の老管長のエピソードもしみじみよかった。

お鳥見女房 (新潮文庫)

お鳥見女房 (新潮文庫)

代々お鳥見役をつとめてきた矢島家。その奥方を主人公にしたシリーズの第1作。家族と大勢の居候たちが次から次へと騒動を起こし、普通だったらキリキリいらいらしてしまいそうなところを雛をはぐくむ親鳥のごとく包み込む珠世の姿がほのぼのしてて楽しい。お家の状況はほのぼのどころではなく、どんどんきな臭くなってきてて心配なのだが、源太夫が向かったのなら安心……でもなくてまたしても厄介のタネを背負い込んできそうなところがなんとも可笑しい。続きが楽しみ。