読了本

愛蔵版 初ものがたり

愛蔵版 初ものがたり

愛蔵版にしか収録されてないという短編「糸吉の恋」が読みたくて再読。といっても内容はすっかり忘れていたのだが……。なんか霊験お初のシリーズともごっちゃになってて、しかも茂七親分の顔は高橋英樹で浮かぶのに当のドラマは観てないというカオスぶり。それにしてもやっぱり宮部みゆきの時代ものは面白いな。文章うまいしキャラもいいし、登場する食べ物はおいしそうだし、謎を小出しにして引っ張るしで、横文字の出てこない世界の情緒と機微をたっぷり堪能できた。
「白魚の目」や「遺恨の桜」のようなやりきれない事件を、やりきれない部分を残したまま落とすところがうまいと思う。下手人を徹底的にやっつけてやりたい、天罰が下ればいいのにとか思うほど憎らしいけど、それをやったらいくら小説だといっても作意が過ぎるもんなあ。稲荷寿司屋の親父の正体と日道坊やのその後がたいへん気になるので『本所深川ふしぎ草紙』『幻色江戸ごよみ』も再読しなければ(読んだはずなのになんで覚えてないんだ私)。