読了本

分冊文庫版 鉄鼠の檻(三) (講談社文庫)

分冊文庫版 鉄鼠の檻(三) (講談社文庫)

堅牢だった檻が一気にゆるみ、壊れてゆく。それは経年劣化のせいなのか、榎木津が降臨……もとい、やりたい放題に引っ掻き回したせいなのか。これだけたくさんの登場人物を出してもしっかり描き分け、複雑にからみ合わせておいて破綻することなく、さらに前作とも繋げていくというのがもはや神技。そりゃ京極堂の生みの親だもんなー、彼のやり方はそのまま京極さんのやり方でもあるわけだ。さあいよいよ大詰め! この話は映像にすると映えると思う。まあ2時間とかじゃ終わらないだろうけど。

プリズムの瞳

プリズムの瞳

今ではポンコツ呼ばわりされるだけの高性能ロボット<ピイ・シリーズ>をめぐる人々の思いを綴った連作短編集。最初はピイに向けられる悪意のかずかずと、上から目線のモノローグ断章にめげそうになったのだけれども、実はそれらは仕掛けのひとつで。いやー面白かった……ロボットが人の心を映す鏡であることを丹念に描いていて読み応えがあった。ロボットの描き方もうまい。なるほどピイ自身には感情がなくとも、私ら人間は無自覚に思いを投影せずにはおれない。クライマックスにも驚かされた。

いのちのパレード

いのちのパレード

正直つまらなかった。断片はいくら集めても断片の集まりにしかならないんだなあと思った。対象との間にワンクッションおいたような、翻訳ものっぽい描き方も意図してのことなのか……。私には作者の迷走に見えるけど、違う評価のしかたもあるのだろう。退屈さをまぎらわすために「蝶使いと春、そして夏」は五十嵐大介、「夕飯は七時」は坂田靖子で脳内マンガ化して読んだりした。書き下ろし「夜想曲」は『プリズムの瞳』を読んだ後だけに薄っぺらく感じられた。