読了本

黄金の王 白銀の王

黄金の王 白銀の王

激しく憎みあうふたつの一族、鳳穐と旺廈。長く続く対立に終止符を打ち「なすべきことをなす」ためにそれぞれの若き頭領が耐えがたきを耐え忍びがたきを忍ぶ。その苦難の道のりを描いた架空歴史絵巻。ものすごく面白かった。息を詰めるようにして一気に読んでしまった。表紙カバーのかわいい鳥はなんだろと思ってたら雷鳥だったのか……。白い雷鳥は主人子の薫衣が属する旺廈の紋章、そして足下に茂る金のススキは穭(ひづち)が統べる鳳穐の紋である。
ふつう歴史小説を“神の視点”で描くときはその時代まで降りていき空気に同化して語るものだけれど、ここでの語り手はちょっと引いて、現代から過去を見はるかす位置にいるのが興味深かった。まるで後世の研究者がロマンとともに歴史を語るように。だから地の文では横文字も普通に出てくるし比較分析もなされるのだが、登場人物は歴史の駒ではなくちゃんと血肉の通った人間として描かれているから読みごたえがある。沢村凛の頭の中には翠の国土と歴史が現実のものとしてあるんだろうな。