慈悲と無慈悲、両極端の側面を
ナチュラルにあわせ持つ英雄・
張作霖の魅力がひきたつ第3巻。とうに『
蒼穹の昴』の分量を越えたけれど、登場人物が増え続けてあらたに大阿哥なんて
ノワールの香り高いキャラまで出てきたけれど、どう話の収拾つけるのだろう。……いや収拾なんてつけなくていいのか。過去はすでに定まっているのだから。だが歴史の流れは変えずとも、これだけ鮮烈で生々しく真に迫ってロマンあふれる、ほかでは読んだことのない疾風怒濤の物語を紡ぎ出せるのだ。やっぱ
浅田次郎ってすごい。歴史の立役者も血の通った人間であること、表舞台にはあがってこない民衆にもドラマチックな人生があることを忘れないから話に厚みがあって面白いのだと思う。竜騎馬のとこは泣けた……。
カラー写真もきれいだが、解説文がほどよくエッセイ風味で、見て読んで面白いハンディ図鑑。ゲンゲはジャムにできるとか、ツルマメは枝豆のようでうまいとか、アレチウリやケチヂミザサの厄介さとか、
メリケンカルカヤの意外な利用法とか、実体験にもとづく「おしゃべり」的な雰囲気が楽しい。また都市部に生える身近な植物の名前を知ることができてお役立ちの一冊だ。著者は森林インスト
ラクターとして野山の観察会などを行っており、そこでの参加者のコメントなどを盛り込んであったりするのも親しみがわく。
八坂書房の植物図鑑シリーズはなかなかいいのが揃ってるなあ。