読了本

水の精霊〈第1部〉幻の民 (teens’ best selections)

水の精霊〈第1部〉幻の民 (teens’ best selections)

以前パラ見したときはオカルトサイキックものかと思って棚に戻してしまったのだが、評判が良いので試しに読んでみたらそんな薄っぺらいもんではまったくなかった。日本の山川に根ざした歴史と民俗が、神秘的な筆致で壮大な物語へと変換されていく。だけどしっかり地に足が着いている。抑制がきいているから胡散臭くならないギリギリのラインで話は展開する。読み進むうちに胸がドキドキしてきて、ページをめくる手が止まらなくなってしまった。
自然への畏怖と憧れは遠野物語とかを読んだ感じにちょっと似ているだろうか。この巻の舞台は高知の四万十川で、都会育ちの真人は豊かな自然に触れて安らぎとともに恐怖をも覚える。そして人を愛することと憎むことの何たるかを知るのである。1巻は主人公たちの中学時代の夏休みの話で、恋知りそめし頃……って感じが瑞々しくていいので、いま中高生の人にぜひ読んで欲しい。でもちょっと話や言葉づかいが難しいかな。明解で綺麗な文章なんだけども。シリーズ物なので先が楽しみだ。