読了本

めぐらし屋

めぐらし屋

亡父が「めぐらし屋」であったと知れる出だしは悠長ながらもミステリアスで、もし書いてるのが宮部みゆきとかだったらスリルとサスペンスの物語になってそうなところを、堀江敏幸なので事件性などはかけらもなく淡々とヒロイン蕗子の日常が綴られていくのだった。蕗子さんは要領のいいタイプではなくぼーっとしてて、いわゆるお局OLなのだがそのキャラゆえに皆から愛されている。縁遠く家族もおらず健康に問題があったりもするのだけど、そういう漠然とした不安すらもぼーっと包み込んで、消極的な前向きさで今を生きていく。何だか不思議な読後感の話だった。めぐらし屋の謎もうやむやになってしまったような気がするけど、まあいいか。純文学とはこういうものなのだろう。