表題作にはまだたどたどしさが残っていたけれど、書き下ろしの「風の古道」は
異世界のリアルな空気や匂いを感じさせて非常に面白かった。永久放浪者のレンも魅力的だ。
行きて帰りし物語の変形のようにも思えるが、ラストで「これは成長の物語ではない」云々とわざわざ断りをいれてるとこを見ると、恒川さんも自分の小説作法がファンタ
ジーの手法と似ているという自覚があるのかな。『雷の季節の終わりに』もファンタ
ジーめいた雰囲気を漂わせていたし。でもコモリの豹変は確実にホラーだった……。『
蟲師』よりも「風の古道」を映画化すればよかったんじゃないか? 主演オダギリで。